2008年2月24日日曜日

日本獣医大へ行く-2006年4月

僧帽弁閉鎖不全症の告知を受けてから
約2ヶ月後の2006年4月、
熊本動物病院の土井口先生の勧めを受けて、
日本獣医生命科学大学動物医療センターに行くことに決めまた。
http://www.nvlu.ac.jp/NVLU_HP_RENEWAL/html/014_facilities/01/01_01.html

それまで、一度も獣医大学病院などに行った事がなかったですし、
5つも行った町の獣医さんの誰一人として、大学病院への通院を
勧めて下さらなかったので、当然推薦状もありませんでした。

一般的に獣医大学病院というところは、推薦がないと予約は難しいのかな?と
少し躊躇していたのですが、日獣医大動物医療センターに実際に直接電話を
してみると、以外にあっさりと予約を取ることができました。一週間後の予約です。

こいぬをみていただくことになったのは、循環器の小山先生です。

小山先生は、日本獣医循環器学会でも副会長をされており、
僧帽弁の内科的治療の領域では、たくさんの論文を出したり
専門学会も開催されている様子でした。
http://www.jsvc.jp/


人間界の場合、論文や学会にたくさん出ている先生=名医では決してないと
思うのですが、 獣医の場合、とにかく、町の獣医の多くは「専門性がない」
ことが明白で、 何か特定の疾患の場合は、とにかくその専門領域を
追求している数少ない獣医さんに出会えるかどうかが正直、肝になると思います。

症例数、最先端の研究、内科的外科的治療法、そのすべての意味で、
とにかく僧帽弁に一番強い先生にお会いして「こいぬの真実」を聞こう、
2006年4月、そんな思いで、武蔵境の日獣医大動物医療センターへ足を運びました。

病院とこいぬ


それにしても、本当に信頼できる獣医院と出会うのはなんと難しいことかと思います。こいぬの場合、良く行くところはありましたが、本当の意味でのホームドクターは残念ながらいませんでした。

獣医嫌いの子の場合、その子がなつく先生が一番いいのだと思いますが、幸か不幸かこいぬは獣医を全く嫌がりませんでした。
生後半年のワクチン注射のときも、注射が終わったあと、先生の手をペロッと舐めて、先生を感激させたくらいです。もちろん、一瞬痛みを感じるはずですが、たぶんそれが自分のために良いことをしてくれているのだと分かっていたのだと思います。

こいぬは、獣医のみならず、誰かに嫌な思いをさせられたという経験が一度も無かったのだと思います。そもそも『悪意』という概念自体持つことがなかったのでしょう。 そういう意味で本当に幸せな犬だったと思います。

写真はこいぬお得意のリラックスポーズです。

「こいぬは本当に心臓病なの?」

「こいぬは本当に心臓病なの?」

この疑問を払拭するため、(もちろん、心臓病じゃないということを)私たちは、徹底的に情報収集をはじめました。インターネットでは、GoogleやYahoo!で「僧帽弁 犬」「心臓病 犬」とかキーワードを入れながら、とにかくいろんなサイトを探し、徹底的に見ていきました。
また専門学会の本を取り寄せたりとしていきました。人間用の心臓病の専門医学書も読み人の場合、僧帽弁閉鎖不全症は今は外科的手術でほとんどの場合治っているという情報も知りました。

ただ、いくら情報をとっても、結局のところ「こいぬ自身が心臓病なのかどうか」ということは、「心雑音を聞く」というだけではわからないことを悟りました。レントゲンも、心臓肥大の状況をビジュアルで把握するだけですので、極端にいうと「この子の心臓の大きさは生まれつきの奇形なのかもしれない、、、」などと推測しはじめると、これも僧帽弁閉鎖不全症という病気かどうかは言及できません。特に、こいぬの場合、レントゲンでは、あまり大きな肥大も確認できなかったのでそういう意味でも私たちにとっては、微妙な診断だったという感じでした。

また、実はトムズ動物病院で心臓病を告知されてから、私達は懲りずに、もう一つ違う獣医さんに行ったのですが、そこでは、心雑音と心電図をされ、「絶対にこいぬ君は心臓病ではないです」と断言されたこともあり、もう何を信じていいのか、わからない状況に陥っていました。

そんな時、読んでいた、獣医専門学会書のひとつに
JVM獣医畜産新報
「僧帽弁閉鎖不全症の診断と重症度評価-土井口修」
http://www.buneido-syuppan.com/jvm0506.html

というのがあり、この土井口先生は、「心雑音」「レントゲン」「カラードップラーエコー」の3つを総合して、その重症度を評価するという論文を書かれていました。

その論文を読んだ私は、熊本動物病院の土井口先生に失礼と思いながらも東京から先生にお電話をしてしまいました。

私が突然電話をし、今のこいぬの状況を話したところ、先生は、まったく嫌な声も出さず、「それはまだ誤診とも正しいともなんともいえないので、とにかくカラーエコーをしなさい」と助言いただき、日本獣医大学の小山先生のお名前を出され、土井口から言われたとアポを入れたらどうかと言われたのです。
土井口先生には、面会もしていないのに、ここまで助言いただき、とても感謝しています。

こうして私達は、日本獣医大学へ足を運ぶことになりました。

また、これ以上、町の獣医に行っても意味がない、結局、いろいろな情報を得た結果、私たちの行き着いたことは「僧帽弁における逆流現象そのもの」を図ることができる「カラーエコー」で検査する以外にはないのではないかということでした。

2008年2月16日土曜日

心臓病が発覚した日 II


先生には本当に申し訳ないと思っていますが、はっきり言って誤診であると確信していました。

それまで、時々お腹をこわすくらいで、たいした病気も無く、8歳とはとても思えないくらい元気で活動量の多い子でした。公園でボールを投げてやると、全速力で追いかけていき、得意げに咥えて持ってきます。しかもこちらが腕が疲れるくらいエンドレスになのです。 とても病気とは思えませんでした。

咳については、今思うと確かにしていたのだと思います。しかし、私はその時はそれが咳だとは思いませんでした。人間の咳とは全く違い、どちらかと言えばくしゃみに近いものでした。 

しかし、万が一ということもあるので、とにかく徹底的に調べようということになりました。

心臓病が発覚した日-2006年2月

2006年2月、私たちは「こいぬももう8歳になるから、たまには健康診断でも受けてみようか?」という軽い理由から、逗子にあるトムズ動物病院に検査をしてもらいにいきました。

その日の夕方、先生から「心雑音が聞こえるので、レントゲンをとりましたが、心臓も肥大している様子です。これは、僧房弁閉鎖不全症という心臓病ですね」と言われました。こいぬは、とても元気で何一つ今までと変わらない様子でしたし、あまりの突然の通告に、その場では、こいぬの心臓病を信じることができませんでした。先生は「こいぬ君は咳はしませんか?最近、疲れている様子はありませんか?」と聞いてきましたので、私たちはないと思うと答えました。

ただ、実はこの1-2年ぐらい前に、こいぬが夜中に何度か変な咳をすることがあって、それを診てもらう為に、3つの動物病院で、計4名の先生にかかった経験がありました。計4名の先生が診たという理由は、実は、最初にかかった病院の先生は「こいぬ君は、心雑音がするので心臓病かもしれない」といったのですがあまり自信がなかったらしく、同じ病院の他の先生がその場で聴診器を当てたところ「心雑音はない」と言われました。ちなみにその病院は鎌倉では有名なK動物病院というところなのですが、その対応に私たちは信じられなくなり、その後、違う病院に行き、同じように診てもらいました。結局、2つ目の病院でも「心雑音はしない、この子は心臓病ではないですよ。安心していいです」とかなり強く言われました。ただ、その後それでも気になったので、もうひとつ違う病院にも行きましたが、そこでもやはり心雑音はしないといわれ、その時は安心したのです。

トムズの先生に、その時の事を話しましたが、「それから1年も経っているならばそれから悪くなったのかもしれないですね」といわれ、「とにかく心臓病は確かなので、今日から薬をはじめたほうがいいかもしれない。この病気は治すことはできないけど、少しでも心臓への負担を減らすことで、悪化を防ぐことができるのです。本動物病院では、チバセンという人間用の薬を処方していますがどうしますか?」と言われました。

私たちは、すでに心臓病の件ではこの2年間に計5名の先生に診てもらっているわけで、それが突然、やはり心臓病でしたといわれても、何もかも信じられずに、その日は何の薬ももらわずに、帰宅しました。

ちなみに、チバセンとは、ACE阻害薬の一種ですが、人間用のお薬でおもに血圧が高い人などが飲んでいる薬です。血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」という体内物質の生成をおさえます。これにより、体の血管が広がり、また水分や電解質が調整されて、血圧が下がります。心臓や腎臓の負担を軽くする効果もあるそうです。もちろん、その日の私たちは、そんな予備知識もなく、ただ、とりあえず、先生が処方したいといった薬の名前だけ覚えて、その日の夜、インターネットで検索してはじめて、ACE阻害薬という言葉を知りました。

「こいぬは、本当に心臓病なのか???本当だったら、どんな風になってしまうんだろう???」

私たち夫婦にとって、この信じがたいというよりも信じたくもない問いはどんなことよりも最重要事項となり、、この日を境に、追求の日々が始まったのでした。

はじめに-このブログについて

このブログは2007年2月15日、9歳5ヶ月で天国に旅立ったトイプードル、こいぬ(本名です)の治療の記録です。

こいぬはその前の日、数時間に及ぶ大手術を乗り切ったのですが、残念ながらその翌日、心不全で息を引き取りました。

私達夫婦は、手術をするかどうか本当に迷いました。二人で徹底的に議論しました。勿論、色々な文献やウェブサイトを調べまくりました。考えに考え抜いた末、手術をすることに決めました。

悲しい結果になりましたが、今でもその決断は正しかったと思っています。勿論、それは私達の子にとってということで、他の子にとってもそうだというわけでは有りません。ただ、私達がどのように決断し、実際どういう経過を辿ったかを記すことで、あの時の私達のように悩み、迷っている飼い主の方にとって参考になることがあるのではないかと思います。そして、そうやってほんの少しでも他の子のためになれるのならば、頑張って手術を耐えたあの子も喜んでくれると思っています。

本当はもっと早く始めようと思いながらも結局あれから一年が経ってしまいました。細かいところの記憶が少しずつあいまいになっているかもしれません。どこまで正確に思い出せるか自信がありませんが、できる限りトライしようと思います。